JORNAL
2024/12/21 16:21
メリノ Merino
フェルトでも手紡ぎでも大変にメジャーな品種です。
柔らかで首回りに持ってきてもチクチク感が少ない、フェルトにしても良く固まり、表面がつるりと滑らかに仕上がると評判の、素晴らしい羊毛優等生。ちなみに学生服もほとんどメリノから作られているそうです。細くきっちりとした梳毛に紡いで耐久性を上げているのですね。
かつて世界中でぶいぶい言わせていた欧州はスペイン(イスパニア)。
この地で品種改良が続けられてメリノ種として固定化。その有用性から王室独占となり、当時輸出が固く禁じられた改良種です。(その後欧州全土、南アフリカ、オーストラリアやニュージーランドなど、飼育地が増加)
Wikipediaの「 」ページ、起源や経緯について詳しいので、興味の湧いた方はぜひそちらも!
生き物ですから各地の気候風土に適応していくので、一言で「メリノ」といっても産地が違うと毛質は異なります。
特に石鹸水フェルト(水フェルト)のときは産地やセカント(繊維の太さ)が違うと縮絨率が違ってくるので、ご注意ください。
白い個体が主流ですが、ごくまれにカラード(色付き。黒や茶色、ブチなど)の個体もいます。
カラードの羊毛は白に混ざっちゃうと「工業製品としての羊毛の価値を下げてしまう」ので、牧場主の趣味としての飼育、また手紡ぎ手織り愛好家向けに飼育されるケースがほとんど、と聞いております。
収穫毛量を増やすためか、皮膚面積大きめ。魅惑の三段胸。
くるりと巻いた角を持つ個体もあり、「羊らしいひつじ」だなあと(google検索結果が開きます)を見て思います。
残念ながら日本国内ではあまり見かけないようです。
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通常羊毛には脂分(正しくは蝋、だそうです)がついています。
これは羊が分泌する皮脂で「ラノリン」と呼ばれ、化粧品や保湿クリームなどにも使われます。
他の品種はそうでもない(グリース、というくらいの固さ)のですが、メリノのラノリンはものすごく「ワックス」な感じでこってり固め。
メリノの毛刈りしただけの原毛(これをフリース、と呼びます)を洗うときには、他の品種よりも若干洗剤の濃度と水温を上げて作業しています。
良くフェルト化する → フェルト化しやすい → 洗うのが若干難しい、というところもあるかな。
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ひつじやで扱っているのは豪州産60's(セカント)。
セカント、というのはイギリスのブラッドフォード式という昔から使われていた単位で、「1ポンド(約450g)の洗毛トップ羊毛から560ヤード(約512m)の綛がいくつ出来るか」という勘定が元になっています。
セカントの数字が大きくなるほど繊維は細くなります。
毛糸の太さは繊維の太さだけではなく繊維の縮れ具合、長さにも左右されるので、セカントは「繊維の太さ」と「長さ」「バネ」トータルに影響を受けます。(なので、実測値が同じ太さの羊毛でも、セカントが異なることがあります)
羊の毛刈り後、「クラッサ―(Classer)」という羊毛鑑定士が「その羊毛が何セカントなのか」という判定を行います。(経験と鑑定眼を要求されるお仕事です)
近代に入り国際取引の増加から、現在はμ(マイクロ)での実測値表記が主流になってきているようです。
こちらは実測なので、数字が小さいほど繊維が細くなります。
日本国内の手紡ぎ界隈ではセカント表記のほうが多いかなあ、という感じです。
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メリノの中でも繊維の太さは様々で、上(より細い)は「エクストラファインメリノ」と呼ばれる70's~、更にその上の「スーパー エクストラファインメリノ」80's 90's~もあります。(このクラス分けについては国際基準があるようです。ちょっと私自身あやふやなので、正確な分け方はご自身でご確認くださいませ~)
…あるのですが、手紡ぎやフェルトにするには細すぎても扱いにくい、またそれだけ生産量が少なく高価(80’sは60’sの3倍くらい…)なので、ひつじやでは24μ相当の60'sを扱っています。
まあ、何事も「よい加減」とか「いい塩梅」がありますわね、という話。
ちなみに人間の手は60's(約24μ)と56's(約28μ)の差、わずか4μを明確に判別できます。
ひつじやのイベント出展時には各羊毛が触り比べられるようにサンプルを出しているので、ぜひ触ってみてください。
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染めていると、コリデールやシュロプシャーよりも「ふんわり」と色が入る感じがあります。
他の品種が羊羹ならメリノはお饅頭…? イマイチ自分でも表現しにくい感覚。
シュロプシャーに比べやはり適応範囲が広い(ネックウェアからフェルト、バッグまで)ので、やはりメリノのほうが染める量は多いです。
紡ぎ方を梳毛にするか紡毛にするかでも毛糸の表情はかなり変わります。(参考:
)